南シナ海

ビル・ヘイトン(安原和見訳)『南シナ海 アジアの覇権をめぐる闘争史』河出書房新社、2015


著者はジャーナリスト。BBCにいて、ベトナムについての本も書いている。この本は、南シナ海問題を歴史と、分野ごとの問題(国際法、エネルギー、ナショナリズム、外交、軍事)に分けて概観するもの。関係国に広く目配りしていて、広範な資料をまじめにあたっている。労作。

歴史部分は、1500年まで、1948年まで、1995年までの3つのパートに分かれていて、南シナ海に対する各国の発見、領有権主張をおさらいする。手を付けたのはフランス、イギリス、日本だが、第二次大戦やインドシナ戦争で、実質的に領有権主張は放棄された。後は中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイが関係国。しかしそれらの国が先占を主張できる根拠は限定的。

分野ごとに分かれている部分は、これもまとまりがよく、関係各国の「事情」をそれぞれわかりやすく示している。

南シナ海問題に関心がある人が最初に読むべき本。原著が出てからすぐに訳されたこともありがたい。