やがて哀しき憲法九条

加藤秀治郎『やがて哀しき憲法九条』展転社、2016


憲法九条をめぐるこれまでの議論を拾い出して紹介する本。体系的な議論はしていないが、法律の教科書ではないので、それは問題ない。それより、誰が何を言っていたかをていねいに拾っているのがおもしろい。

「芦田修正」の解釈について、芦田均自身が、憲法公布の時点で「自衛は可能」と言っていたこと、「文民条項」の意味についての学者の論争の経緯、左翼でありながら自衛権と軍備を肯定していた荒畑寒村や小堀甚二の見解、向坂逸郎が「社会主義政権下での再軍備」を間接的に認めていたことなど、知らなかったことがたくさん書かれていて勉強になった。

今議論されていることを知っているだけでは、わからないことがたくさんあるということ。やっぱり整理された本だけ読んでいたのではいけない。