闇経済の怪物たち

溝口敦『闇経済の怪物たち グレービジネスでボロ儲けする人々』光文社新書、2016


溝口敦の新刊。『小説宝石』の連載を書籍化したもの。

取り上げているのは、違法スレスレ(またはほぼ違法)の「グレービジネス」をしている人々。内容は、「ネットの裏情報」、「出会い系サイト」、「デリヘル」、「危険ドラッグの仕切り」、「闇カジノのイカサマ・ディーラー」、「FX、仮想通貨販売」、「関東連合の育ての親」、「純金インゴット密輸入」、「街場の顔役」。

タイトルにはボロ儲けと書いてあって、経営者は確かに儲けているのだが、ラクをして儲けているわけではない。この本に登場する人々は、基本的にまったく税金を払っておらず、税務署から自分のビジネスを隠すことに非常に気を遣っている。

税務署にバレれば税金をとられるだけでなく、警察がビジネスに介入してくる緒をつくってしまう。だから税務署の査察を受けないようにしているし、受けても何も出ないように工夫している。

登場するのは、みな非常に頭がよく、努力もし、社会の変化に敏感な人々。そうでなければどんなビジネスでも成功はむずかしいだろうが、このビジネスは下手をすると逮捕、起訴、収監ということになる。登場人物で、刑務所入りが勲章になるなどと思っている者は一人もおらず、自分が塀の中に落ちないように細心の注意を払っている。

ほとんどが匿名とはいえ、自分の商売の手口をここまであからさまにしていいのかと思うくらい、はっきり細かいことまで話している。著者の長年の仕事の延長にあるとはいえ、聞き出せた力には脱帽。

大企業に勤めていれば安泰という社会ではなくなっているこの頃、どんな商売でも、このくらいの着眼と努力がなければ成功はしないだろう。逆にできている人は、大金をもっていい生活をできるということ。