右翼という職業
武寛『右翼という職業』文庫ぎんが堂、2013
著者は、1954年生まれ、右翼団体の事務局長を務めて、現在は会社経営者となっている。団体名、人名はすべて仮名ということになっているが、内容は非常に詳細でリアリティがあり、ある程度内情に通じていないと書けない。
街宣右翼が何をして糊口をしのいでいるかというと、基本的にはヤクザと変わらず、債権取立、示談、談合、スキャンダル、選挙に介入し、彼らの武器である「街宣」をかけて、手数料を取ること。
依頼を待っているだけではなく、自分からネタ探しをすることは怠らない。政治家(主に地方議員)の過去の経歴を調べあげ、学歴詐称を掴むと、これをネタに街宣をして、金をふんだくっている。
基本的にこの稼業をしている者には、警察や弁護士はほとんど効果がない。相手の弱み(たいてい悪事)につけこんでいて、恐喝にならないように注意しているので、法律は通じない。警察(公安)は、右翼に対しては嘆願程度のことしかしておらず、弁護士は大声を出せばそれだけでビビってしまうような人々。
彼らを黙らせることができるのは、同業の街宣右翼かヤクザだけ。これは日頃の付き合いというものがあるので、それが効果を持っている。
この手の強面で押す人々に対しては、コネクションか迫力がないとどうにもならない。これも、一種の「顔役」の類。思想はあるのかないのか、よくわからない。