右翼という職業

武寛『右翼という職業』文庫ぎんが堂、2013


これは2004年に同じ出版社(イースト・プレス)から、『我々の業界 右翼は総合アウトローサービス業だ』を改題、文庫化したもの。

著者は、1954年生まれ、右翼団体の事務局長を務めて、現在は会社経営者となっている。団体名、人名はすべて仮名ということになっているが、内容は非常に詳細でリアリティがあり、ある程度内情に通じていないと書けない。

街宣右翼が何をして糊口をしのいでいるかというと、基本的にはヤクザと変わらず、債権取立、示談、談合、スキャンダル、選挙に介入し、彼らの武器である「街宣」をかけて、手数料を取ること。

依頼を待っているだけではなく、自分からネタ探しをすることは怠らない。政治家(主に地方議員)の過去の経歴を調べあげ、学歴詐称を掴むと、これをネタに街宣をして、金をふんだくっている。

基本的にこの稼業をしている者には、警察や弁護士はほとんど効果がない。相手の弱み(たいてい悪事)につけこんでいて、恐喝にならないように注意しているので、法律は通じない。警察(公安)は、右翼に対しては嘆願程度のことしかしておらず、弁護士は大声を出せばそれだけでビビってしまうような人々。

彼らを黙らせることができるのは、同業の街宣右翼かヤクザだけ。これは日頃の付き合いというものがあるので、それが効果を持っている。

竹下登に対する日本皇民党の「ほめ殺し」事件は、何か竹下の弱みを掴んでゆすっていたのかと思っていたが、特にゆすれるようなネタがなくても、街宣には効力はある。この本でよくわかった。

この手の強面で押す人々に対しては、コネクションか迫力がないとどうにもならない。これも、一種の「顔役」の類。思想はあるのかないのか、よくわからない。