普天間・辺野古 歪められた二◯年

宮城大蔵、渡辺豪『普天間辺野古 歪められた二◯年』集英社新書、2016


外交史家とジャーナリストによる普天間基地移設問題の歴史本。

橋本政権時の普天間移設案提案から、現在の安倍政権、翁長県政までの、日本政府と沖縄県庁の交渉と対立を中心に、普天間基地移設問題の経緯が要領よくまとめられている。資料の出典がきちんとしているところが一番大きな価値。

しかし、普天間基地の機能とそれが抑止に対して持っている役割については正しく評価されていない。外交史家が執筆しているにもかかわらず、この点は重大な欠点。

また、執筆は著者二人の名義になっているが、執筆分担が明らかにされていない。当然、著者二人で協議、推敲した結果だろうが、渡辺豪のこれまでの著作を見れば、偏りを疑わざるを得ないので、分担は明示すべき。

それでも、普天間基地移設問題が、「沖縄の負担軽減」を目的に始められた政策だったのに、それが「沖縄への構造的差別」にされてしまい、かりに辺野古移設が実現したとしても、負担軽減とはまったく受け取られないことは、重大な問題であることは動かない。このままずるずると長引いても、誰の得にもならないのだが…。