イスラームとの講和

内藤正典中田考イスラームとの講和 文明の共存をめざして』集英社新書、2016


中東研究者とイスラム学者が、ヨーロッパはイスラムと「講和」すべきだと説く本。ヨーロッパは、ドイツあるいはどこかの国が代表になり、イスラムはトルコのエルドアンあたりが代表になって、停戦と講和の話し合いをすべきだというのが、この本の内容。

現在の状況で、ヨーロッパとイスラム、特にISの話し合いなど絶対にできないとしか見えないし、そもそもイスラムを誰かが「代表」できるのかは疑問なのだが、ヨーロッパ諸国は難民の取り扱いだけでなく、イスラム圏からの移民の処遇そのものに失敗しており、それがフランスに対するテロ(著者は、この言葉を使うこと自体が間違っているとして拒否しているが)の原因だという見解には納得。

ISに対する空爆も、問題の解決どころか、ジハーディストを増やしているだけ。ヨーロッパ諸国でのムスリムの扱いが根本的に変わらなければ、テロは収まらないというのも、そうだろう。ヨーロッパでの「人権、人道」が根本的に偽物という考え方もそうかもしれない。

「講和」の内容は、この本を読んでもよくわからない。しかし、今の対イスラム政策が行き詰まっていることは事実。ヨーロッパが「講和」などするとは思えないが、どうにもならないレベルになった時に、本書のアイディアが光を浴びることがあるのかもしれない。