日本会議の研究

菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書、2016


右派団体として、次第に名前が通ってきた「日本会議」についての調査本。かなりおもしろい。もとは、扶桑社のサイト「ハーバー・ビジネス・オンライン」上のウェブ連載「草の根保守の蠢動」で、これを書籍化したもの。

日本会議の事務方や、この団体に関係する一部の学者が、70年安保当時、右派の学生運動に関わっていたこと、彼らの多くが「生長の家」の関係者で、「生長の家」が左旋回して右派政治運動から身を引いた後で、右派として運動体を形成して残っていったことを資料に基いて明らかにしている。

また、日本会議の集会や、スタッフとして参加しているメンバーに取材して、参加者がどのようにリクルートされているのか、スタッフをどうやって集めているのかも調べている。

資料が少ない人であっても、過去の広報誌などを丹念に調べて日本会議の歴史をよく描き出していて、手間をかけて取材していることがわかる。労作。

これを読むだけではわからないことも多い(政治家との接点、日本会議に参加している宗教団体相互の関係)のだが、それはまたのお楽しみなのだろう。右派政治運動が、一握りの人々の継続的な活動の成果だったことを明らかにしている。著者はこの本を1年の取材で書いたと言っているが、よくここまで書けたと思う。