権力の館を歩く

御厨貴『権力の館を歩く』毎日新聞社、2010


放送大学で著者のテレビ講義「権力の館を考える」が放送されていて、それがおもしろいので、こちらも読んでみた。非常におもしろい。

中央省庁庁舎、地方庁舎、政党本部もあるのだが、やはりおもしろいのは政治家の私邸。首相を務めたクラスの政治家の邸宅は、そのまま保存されていることが多いので、間取り図なんかもちゃんとある。それらは当然政治家のオーダーメイドなので、どこに建てるか、応接、食事、私生活という機能をどのように配置するかは政治家自身が決めている。邸宅を見ることで、政治家の政治に対する態度が見えるのだ、というのが著者の立場。

実際に東京大学工学部で著者が行った講義を下敷きにしているので、政治史家としてだけではなく、建築の専門家から見た視点も入っている。見る目のある人が見れば、このように映るのだとわかる。

首相官邸(新旧)、宮内庁など、普通には入れないところの内部もわかっておもしろい。自民党本部の総裁室に誰の肖像画がかかっているかなど、豆知識もあって楽しい。図版も多いのだが、テレビで実際に建物を見せてくれているのがありがたい。類書がないだけに、貴重な本。