中国4.0

エドワード・ルトワック(奥山真司訳)『中国4.0 暴発する中華帝国』文春新書、2016


ルトワックの『自滅する中国』に続く中国本。こっちはもともと本として書き下ろされたものではなく、訳者の奥山真司のインタビューをもとにして構成されたもの。巻末に訳者の長い解説がついている。

タイトルの「中国4.0」というのは、「韜光養晦」戦略が「1.0」、その後の拡張戦略が「2.0」、2014年秋以後の「選択的攻勢」が「3.0」、これから中国が選択するだろう将来の戦略が「4.0」という意味。

ルトワックの持論である「大国は環境を考えずに行動できるので、それがゆえに自滅的な行動をする」という理屈はこの本でも引き続き主張されているし、中国がその影響を免れないこと、感情に左右されていることにも言及されている。

ただ、細かい部分、特に中国の内政については「そうかなあ」と思うところもあり、どの辺までを受け入れればいいのか、正直迷う。戦略研究は、相手の細かいところよりも、相手の行動のパターンを大づかみでわかればよいというものなのはわかるが、それがどこまで通じるか。

ただ、尖閣諸島問題について、もし中国が実力を使ってきた場合に日本は最初からアメリカをあてにすべきではないと言っていることについては納得。日本が実力で抵抗しないのにアメリカが日本を救援することはないだろう。それはアメリカ側からものを見ている著者がよくわかっていること。中国から見てどうかということでなく、アメリカから見てどのように見えるかを考える材料としては有益。