中国GDPの大嘘

高橋洋一『中国GDPの大嘘』講談社、2016


高橋洋一による中国経済本。基本的には、中国の統計がどのくらい信用できないかという話をしている。

基本的な根拠はソ連時代の統計。ソ連の統計上のごまかしは、ソ連崩壊後に当事者のロシア人らが検証しているので、どのようにごまかしていたかということがよくわかる。単年度の数字が信用できないだけでなく、数字そのものが発表されなかったり、前年度比しか発表がなかったりする。従って、数字が信用できないだけでなく、そこから傾向を読み取ることもできない。

中国も統計ではソ連と同じことをしていた。また国有企業が大きな比重を占めているので、ごまかしを起こすインセンティブが大きい。独立した複数の機関が統計を出して相互チェックすることもしていない。

では、統計の一部を使って、真実を「推測」することはできるのか。著者によればそれも難しい。ウィキリークスで暴露された、李克強が「電力消費量、貨物輸送量、金融機関の貸出量」しか見ていないと言った事実についても、それが通じるのは李克強が重工業中心の遼寧省の書記だったからで、同じやり方が中国の他の地方で使えるわけではない。

結局、中国の統計で比較的信頼性が高いのは、貿易統計くらいのもの。著者は、2015年の中国のGDP伸び率は公表数字では6.9%だが、輸入額から単純に推計するとマイナス3%と言っている。この数字も確実なものではない。

あとはエピソードを盛っているところが多く、どこまで信じていいのかわからない。なんといっても、著者は中国専門家ではない。

そうであっても、中国の統計が政治の産物で、そこから事実はわからないことは確か。真実は中国政府もわからない。中国経済を数字で議論するのはよほどの注意がなければできない。