新装版 ヤクザ崩壊 半グレ勃興

溝口敦『新装版 ヤクザ崩壊 半グレ勃興』講談社+α文庫、2015


同じ著者の『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』2011の、改訂版。これまでの著者の論旨をなぞったものだが、筋がしっかりしているので、内容は読ませるもの。

著者の主張では、「ヤクザは割にあわない」ということ。ヤクザは自分の顔を外に出すことが商売をしていく上で重要な要素になっているが、そういう商売は先細りになっていて、割にあわない。特殊詐欺は、ヤミ金融が業態を変えたものだが、最初から自分の身元が割れていたのではやっていけない。自分の身元は隠し、ばれないように商売を続けていくことが重要で、ヤクザという組織はその目的に合っていない。

そのことはヤクザ自身にも認識されており、ヤクザ組織自体が地下に潜行するようになっていて、表に顔を出すのは直系団体=二次団体の組長クラスに限定するようになっている。ヤクザは匿名化、地下化するのでなければ生き残れないと知っている。

そうであれば、ヤクザの暴力的要素はある程度封じられる。というより、暴力も地下に潜り、公然と暴力を手段とすることは避けられる。やる場合には、この本にも取り上げられている「ビール瓶で殴打」とか、まったく身元の割れない殺し屋を雇うことになる。

著者は半グレも含めて反社会的勢力は全部、法の網にかけるべきだと言っているが、現実問題、それはむずかしい。厳罰化も十分な対策ではない。社会と暴力の関係を考えさせてくれる本ではある。