政治家の見極め方

御厨貴『政治家の見極め方』NHK出版新書、2016


御厨貴の政治家論。講演のようなスタイルで書かれているが、これが読みやすい。今の政治家が小粒で、その理由は小選挙区制だと言っているが、なぜ日本の小選挙区制がアメリカやイギリスのように機能しないかというと、それは候補者選抜のプロセスが違う。現職優先、候補者選抜が出来レースになっていて、まともな人を選ぶようなシステムになっていない。

総理の大統領化、総理の国際的プレゼンスの重要性、派閥の崩壊など、押さえるべきことは議論している。その上で、著者が強調するのは、吉田茂以来の「昔の政治家」との違い。

昔の政治家は、国民など向いておらず、そもそも民主政治に適応しようともしていなかった人々。それが変わってきたのは、中曽根あたりから。テレビ、演出の方法を身につけた人が総理になることになった。その果てが小泉政権

政治家の生態とその変化が実地の体験に基いて細かく観察されている。これは著者がオーラル・ヒストリーを積み上げてきたことと、「時事放談」の司会者をつとめていることのおかげ。政治家がどういう生物で、それがどのように変わってきたのかが、説得的に述べられている。

著者は戦後70年がすぎて、政治家が異世界の生物から普通の人に近づいてきたと言っている。その結果が今の政治。この本で、TBS「時事放談」と放送大学「権力の館」を見る気になった。現場を見ている練達の観察者はおもしろい。