世界史 上

ウィリアム・H・マクニール(増田義郎佐々木昭夫訳)『世界史』上、中公文庫、2001


マクニールの『世界史』、とりあえず上巻のみ読んでみた。この本を読んだ目的は、イスラムとインドの歴史、紀元前5世紀以前の中東・エジプト地域の歴史のことを知るためだが、その目的にはよく役に立つ。

この翻訳の底本は1999年版だが、原著初版は1969年。一人で、世界史全部を書こうという暴挙には敬服する。日本や中国の歴史についても、読んでみてちょっと変なところがないこともないが、だいたいは問題ない。

上巻は、1500年くらいまでの歴史。地域間交流はあっても、地域ごとにバラバラな歴史しかないので、これを一定の密度で書くのは大変。第四版への序文を読むと、これはオックスフォード大学出版局から出ていた10巻本の『世界史教材』があまりに長すぎるので、短くすることを至上命題として書いたとある。この本が、文庫本で400ページ余りなので、原著はさらに短く、その規模でちゃんと世界史になる本を書いたのはやはり偉業。

個人的には、イスラムアラビア半島より外の地域に広範に拡大できた理由と、インド社会の変遷に興味があったので、それが理解できてよかった。イスラムは、キリスト教ユダヤ教からは税を取り立てるだけなので、厳密な改宗を要求するカトリック教会に比べればましだった。またインドのようなカースト社会では、社会の上層にしか浸透していなかった。他の地域では、在来の宗教が弱すぎて、浸透されてしまったということだろう。

下巻も借りてあるので、早く読まなければ。上巻よりは、ちゃんと頭に入るといいけど。