現代ベトナムを知るための60章

今井昭夫、岩井美佐紀『現代ベトナムを知るための60章』第2版、明石書店、2012


明石書店のエリア・スタディーズのベトナム編。初版が2004年で、第2版を8年後に出しているので良心的。

経済的には15年遅れの中国のような印象(ベトナムのドイ・モイ政策は1986年開始だが、私企業設立の手続きが簡素化されたのは2000年)で、中国の高度成長期より成長率が低めなので、この見方でそれほど間違ってはいないはず。

しかし、物価は上がっていて、ベトナムはなんでも安いという日本人の印象は、単に為替レートで思っているだけのことで、月収200万-300万ドン(都市非熟練労働者)で、フォー1杯が2万ドン-4万ドンだから現地の生活水準からすれば安くはない。しかもハノイで15ー18m2の狭い部屋で月家賃が200-250万ドンというから、生活はきつい。

港湾、道路、鉄道のインフラは未整備で、都市と農村の格差は激しいから、経済成長はしていても、社会運営はたいへんだ。ベトナムが外交的に中国と揉め事を起こすことを望まず、アメリカに牽制させてめんどうを避けようとしているのも当然だと思える。貿易で中国依存しているのだから、仕方がない。

固有名詞が少ない分、ベトナム史の部分以外は読みやすかった。このシリーズは、お手軽に読めるのがよいところ。