曹操

竹田晃『曹操 三国志の奸雄』講談社学術文庫、1996


副題に「奸雄」とわざわざ入っているが、著者は学者なので、もちろん史実に基づいた曹操の本。後漢王朝での宦官と外戚の関係や、曹操の祖父、父の代でのことに紙数が割かれているので、この部分が一番勉強になった。

それ以外に重要なのは、袁紹を撃破して中国北部を勢力圏にするまでに曹操が何をしていたか。演義と違って、バラバラな行動を取っていることが多いのだ。

最後の章は、曹操の文学にあてられているが、いかにも英雄っぽい「短歌行」は曹操の詩の一部でしかなく、神仙への憧れ、戦争への嘆き、人間によせる深い同情が同居する。劉備孫権は詩など、ろくに書いてもいないのだから、レベルが違う。政治的に英雄で、文学もできる帝王は、中国史にもそんなにいない。やはり曹操は偉人。