涙の乙女 大西巷一短編集

大西巷一『涙の乙女 大西巷一短編集』双葉社、2015


『乙女戦争(ディーヴチー・ヴァールカ)』の作者の短編集。「男装の殺人鬼マネット・ボヌール」(フランス大革命)、「ブルターニュの雌獅子~復讐のジャンヌ」(百年戦争期のフランス)、「涙の乙女~或るインカ皇女の悲劇」(コンスタドーレ支配下のペルー)、「豚王」(中世フランス)の4作入り。

最後の「豚王」だけ、絵柄もストーリーのつくりもかなり違うのだが、これが作者のデビュー作。なんと1997年発表だから、20年近く前だ。1973年生まれなのね。

これ以外の3作は、「乙女戦争ディーヴチー・ヴァールカ」と似たパターンのストーリーで、女が男にエグくレイプされるが、転んでもただでは起きずにたくましく生きていくというもの。作者はこういう話が好きなのだ。

このパターンだけなら、どうということはないが、作者の持ち味は、中世世界への偏愛。主役の女の子のかわいさと、ドロドロの中世世界の細かい描き込みをミックスしたテイストは非常によい。歴史マンガなんて、調べるのに、いくら暇があってもたりず、よくやるわと思うが、本当に対象が好きだからできるのだ。

日本中世が好きだけど、ヨーロッパ中世にはいまひとつとっかかりがなかった。この作者のマンガは、いい手づるになりそう。「乙女戦争」、残りの巻を早く読まなければ。