オールド・テロリスト

村上龍『オールド・テロリスト』、文藝春秋、2015


ひさしぶりに村上龍の本を読んだ。これは大傑作。

失職したライターのセキグチ(登場人物の名前は基本的にカタカナ)は、誰かわからない電話の通報で、NHKでテロが起こると聞いて出かけていく。実際にNHKは放火され、12人が死亡。

手がかりを見つけて書道教室に行き、そこでカツラギという女に出会う。そこで池上柳橋商店街でテロが起こると聞かされて出かけていく。刈払機が暴走して3人死ぬ。

セキグチはカツラギといっしょに、心療内科に行く。そこで歌舞伎町でのテロ計画を聞かされてまた出て行く。イペリットがまかれ、さらに爆発。1000人近くが死ぬ大惨事になる。

セキグチは、カツラギの祖父の友人だという老人に会いに行く。その老人から、テロ事件は、自分の仲間が暴走して起こしているので、止めてほしいと頼まれる。セキグチは10億円のカネをカツラギに預けられ、テロ計画を探り出そうとする。

セキグチは、テロ計画の首謀者ミツイシから次のテロ計画を聞かされる。大砲で原発を砲撃する。そのことをセキグチに、書いてみんなに知らせろというのだ。

セキグチは元妻に電話して、そのことを話すと、「書いたら、円も株も暴落して日本は潰れる」と言われる。元妻のコネで政府中枢の関係者と会って計画を伝える。アメリカ軍が出動して、テロリストを始末するという。

日本政府の情報はテロリストにダダ漏れ。テロリストは自ら集合してセキグチとカツラギを呼び、待ち構える。米軍のヘリコプターは撃墜するが、ドローンが飛んできて、テロリストは壊滅させられる。ミツイシは、地下室でセキグチにきっとこの計画のことを書いてくれと言い残し、セキグチとカツラギを逃がす。ミツイシは、米軍に焼き殺される。


こういうストーリー。『愛と幻想のファシズム』以来のひさびさに神経が強くやられる小説。テロの武器が88ミリ砲というのはちょっと笑えるが、イペリットや可燃物を人が集まる所でばらまくくらいのことは、やる気があればわけはない。茹でガエルのようにじわじわ死ぬより、テロで吹き飛ばされたほうがよい。テロリストが老人ばかりというのも効いている。終わりも非常にキレがよい。