麻原彰晃の誕生

高山文彦麻原彰晃の誕生』、文春新書、2006


麻原彰晃の生い立ちを追いかけた本。元は雑誌『現代』の1996年の連載に、『フォーカス』の2001年の連載を足してまとめたもの。

誕生から、盲学校時代、上京と鍼灸院開業、薬事法違反での逮捕、ヨガ道場開設、オウム神仙の会、オウム真理教への衣替え、ダライ・ラマとの会見、最初の死亡事件と隠蔽、殺人、テロ事件へと、麻原のたどった道を簡潔に要領よく描いている。

ムダなところがなく、麻原彰晃の人物に焦点をおいて書かれているので非常に読みやすい。この本で読むかぎりでは、麻原は、少し妄想の入った野心家。このレベルの妄想は宗教家なら、けっこういるレベル。しかし、教団での教祖絶対化と教団の拡大で、麻原の野望そのものも際限なく拡大し、行くところまでいった結果が、オウム事件

麻原の性格のほかに、閉鎖的な宗教の性格、80年代のオカルトブーム終末論、などいろいろな要素があって起こった事件だが、実行するかどうかは別として、このレベルのことはいつ起こってもおかしくはない。キチガイが刃物を持てば、いろんなことができるのだ。