建築探偵術入門

東京建築探偵団『建築探偵術入門』、文春文庫、2015


この本は、『スーパーガイド 建築探偵術入門―東京、横浜の西洋館230を追跡する 』(文春文庫―ビジュアル版)1986、を再版したもの。30年前に出た本をなぜ今頃再版で出すのかというと、内容を見ればわかるわけで、ここに出ている建物の半分以上、おそらく7割くらいがもはや現存しないのだ。

もともと著者らは、1974年に当時忘れられていた古い西洋建築を訪ね歩くプロジェクトを始めていて、それが『日本近代建築総覧』(技報堂出版)として出版され、それが一般書として出たのが『近代建築ガイドブック』(全5巻、鹿島出版会)。さらにその中で東京と横浜の建物だけを取り出して、写真と地図をつけて文庫として出版されたのが、この本の元本。

建築物は、歴史的価値があろうとなんだろうと、古くなれば片っ端から建て替えられてしまうもの。この再版あとがきで藤森照信が書いているが、この本に収録されている建築の中で、原型を復元して建て替えられたのは、東京駅だけ。「一将功成りて万骨枯る」と言っているが、そのとおり。

この本は当然専門家でなければ書けないし、あらかじめリストもなく、インターネットもなかった時代に足で稼いで書かれたもの。著者も、藤森照信のほか、宍戸実(死去)、河東義之、堀勇良、清水慶一(死去)、増田彰久という人々。後に名を成した人たちが若い頃に作ったのだ。

半分は遺影みたいなものだが、残っているものもそれなりにある。電子版で買ったので、次に東京に行く時に持っていく。