水滸伝 1

施耐庵(村上知行訳)『水滸伝』1、グーテンベルク21、2009


村上知行訳の三国志水滸伝は、現代思想社の現代教養文庫から出ていて、版元がつぶれてからは入手がむずかしくなっていたのだが、Amazonで検索してみると、電子書籍になっていた。すぐに買いました。

1巻は、序の、洪大尉が百八の妖魔を逃がすところから、第八回「柴進は天下の客をもてなし 林冲は洪師範をうちのめす」ところまで。村上訳は、七十回本なのに、八巻まであって、一冊540円。割高だが、文句は言えない。この本は、電子化されていなければ図書館でしか読めないのだ。

訳はリズムよし。「三国志」でもそうだが、自分は村上知行の、ちょっと昔のテイストのする訳が好きなのだ。戦前の中国にいて、京劇や講談を実際に見ていた人だから、他の人にはマネのできないもの。三国志とはちょっと違い、水滸伝の登場人物のセリフはおもいきりヤクザっぽくしてある。この巻だと、王進、史進魯智深林冲あたりが主要な登場人物だが、みんなヤクザな人たち。そういう話だからいいけどね。

しかし、電子版には致命的な欠点がある。紙の本ではちゃんと印刷されていた字が、電子版では出ないのだ。人名、地名、役職名が相当数、正しい字で出力されておらず、出ない字は※にされてしまい、漢字の偏と旁がいちいち説明されている。だいたいのっけから「高俅」が出ない(俅は機種依存文字)。

これは興をそぐことはなはだしい。電子版はこういうところができないのだ。現代の本はともかく、中国古典でこれはいけない。まあ古書を買うことも大変なので、ガマンして買うけれど。