わたしの神様

小島慶子『わたしの神様』、幻冬舎、2015


小島慶子のテレビ業界ネタ小説。著者は、言うことにも書くことにも容赦がない人だが、この小説もまったく容赦がない。

登場人物はほとんどが狂っている。名声、金、セックス、隣人を少しでも見下げたいという欲望、自分こそ一番というプライド、そういうものの亡者たち。

主役は女性アナウンサーたちだが、実際に権力を持って彼女らを使っているのは、テレビ局のプロデューサーや幹部。彼らは男性。小利口な女など、邪魔なだけだと思われていて、男にこび、男を立ててくれる女でないと、画面の前には立てない。それができたとしても、決定的なのは視聴率。数字が取れなければ、アナウンサーなど責任をかぶせられて、さっさと異動させられる。

もちろん女の方も、それがわかった上で自分の欲望を最高度に実現するための道具として男を使っている。テレビ局の関係者だけではなく、作家、医者、代理店などがからむが、彼らも自分の欲望の賞品として、アナウンサーに群がってくる人たち。

自分にも放送局の知り合いがいるが、これを読むと、彼らが少しだけほのめかしていたことが多少はわかった。欲望まみれの世界で生きていけるのはまともじゃない神経の持ち主だけ。

放送局だけがそうであるわけではないが、大衆の欲望と大金がからんでいるところはやはりレベルが違う。小市民など入ってはいけないところ。