私を連れて逃げて、お願い 1巻

松田洋子『私を連れて逃げて、お願い』1、エンターブレイン、2015


最近2巻が出た、松田洋子のマンガの1巻。籠の鳥にされていたお姫様(日芽)と、野良犬のようにフラフラしていたところを魔女みたいな劇団のおばちゃんに拾われて飼われていた王子様(央治)が、劇団のおばちゃんがらみの殺人事件がきっかけで逃避行に出るというお話。

王子様とお姫様という形式だけ持ってきているが、中身はもちろんしょぼくれた庶民というか、下層中流からほんとの下層くらいの2人。松田洋子が得意なキャラクター。

変なラブホテルに泊まって(何もしてないけど)、ホテルのおばちゃんが妖怪みたいに気持ち悪く、おばちゃんのダンナの遺体が転がっていて、おまけに持ち金をおばちゃんがネコババとか、エグみのある要素がモリモリ。松田洋子のマンガだから当然ですが…。

何より、逃避行をはじめる時点で、日芽と央治の間には愛どころかセックスもない。2巻以後にいろいろ展開を作っていくのだろうが、「とにかく逃げる」という状況設定だけ与えていて、中身は空白というもの。

おもしろくなるかどうかは、「なんで二人で逃げてるのか」というところ次第。2巻は最近出たので、とりあえず読みます。1巻では泣きの要素は皆無なので、これはいいところ。乾いた喜劇として突っ走ってくれるといいな。