昭和史 戦後編1945-1989

半藤一利『昭和史 戦後編1945-1989』、翩翻者、2013


半藤一利『昭和史』の続編。太平洋戦争敗戦後のことを扱う。

しかし、全15章のうち、9章までが講和条約締結まで、つまり占領下の時期の記述にあてられている。中心は、マッカーサーの政策と、日本政府および天皇との関係。著者によれば、戦後日本の骨格が作られたのは占領下の時期なので、そこに焦点をあてたと言っている。

ここの部分の記述は厚いし、確かにおもしろい。「はじめの章」は「天皇マッカーサー会談にはじまる戦後」で、最後に「こぼればなし 昭和天皇マッカーサー会談秘話」というタイトルで、昭和天皇マッカーサーの会談内容を日本側通訳が記録した内容が書かれている。中身は、戦後日本の基本政策に関することなので重要。この部分だけで価値はある。

占領下の歴史については、このようにマッカーサーと日本側のやりとりという基本ストーリーがしっかりしているので、ちゃんと読める。しかし、その後の記述、1972年までの記述は事件の羅列で、記述の骨になる部分がない。社会史というよりは、個別の事件とそれに対するコメントばかりで非常に物足りない。この本の前著が軍と政府の動向に焦点をあてて、読みやすくまとまっていただけに残念。基本的な史料がない状態で書いているのでこれしか書けないということだろう。

著者の記述は1972年(沖縄返還)で終わっていて、この後は現在進行中の現代につながっているので、歴史としては書けないと言っているが、たしかに1951年から72年までの記述の薄さを見るとしかたないかもしれない。著者個人の日記と年表を合わせたような記述しかない。

現代史で一人の著者がまとまった通史を書くのは困難ということ。著者自身が「講談」と言っているので、そういうものとして読むべき本。