国防政策が生んだ沖縄基地マフィア

平井康嗣、野中大樹『国防政策が生んだ沖縄基地マフィア』、七つ森書館、2015


沖縄米軍基地利権の問題を追いかけた本。著者の二人は『週刊金曜日』記者。本書は『週刊金曜日』の連載に加筆したもの。

ここでの主役は、仲泊弘次(東開発会長)、荻堂盛秀(沖縄県商工会会長、名護市商工会会長)、比嘉鉄也(元名護市長)、島袋吉和(元名護市長)、末松文信(元名護副市長)といった人たち。政治家以外は、あまりメディアには出てこない。

これらの人々が、国会議員、防衛省首相官邸等々を巻き込んでお金をゴチャゴチャ回して懐に入れている、というのがこの本の基本ストーリー。細かく情報を聞き集めているので信憑性は高いと感じられる。官房機密費がこんなところにも落とされているとは知らなかった。いろんな名目を作って、沖縄県北部にはカネが落ち放題。

しかし、この本が基本的に信用出来ないのは、現知事の翁長雄志やその陣営に対する批判は一切出てこないということ。一部の人がお金をちょろまかしていると言っても、保守も革新もどっちにも転ぶ沖縄政界で、翁長氏が「オール沖縄を目指すきれいな人」のはずはないだろう。著者たちは、大久保潤、篠原章『沖縄の不都合な真実』を、「沖縄の実情とかけ離れた認識」と手厳しく批判しているが、この本が描くような、政治家が一部の利権マフィアと英雄にきれいに分かれているわけはない。よく書けているが所詮は『週刊金曜日』の限界は越えられていない。目取真俊のインタビューには失笑するしかない。