マダムGの館 黒猫編

グレゴリ青山『マダムGの館 黒猫編』、小学館、2012


前作『マダムGの館 月光浴編』の続編。前作だと雨宮という少年が、マダムGから美について教えを受ける設定だったのだが、この本は、前作に出ていた天知小五郎という探偵(顔は、天知茂そのまま)とマダムGが美で対決したり、マダムGの弟子姫川紅蓮美(これは、「ガラスの仮面」のパロ)が美の学徒として教えを受けたり、ということになっている。

ネタはさらにわかりにくくなり、ルイス・ブルックス若尾文子、猫の本、長谷川一夫、女切手、紙芝居、小林かいち、夏着物、幽霊画、鍬形蕙斎、夢、モダーンズ、高峰秀子、黒猫、プルースト効果山海経

まったく知らないネタが頻出。若尾文子長谷川一夫高峰秀子は、全盛期の作品を見ていないので、顔を知っているというだけ。山海経も、自分にとってはどこが面白いのか、とっかかりがないもの。

しかし、これを読んでいると、著者がとりあげているネタがどれだけ奥深いものかがうかがい知れる。高峰秀子のエッセイとか、普通読んでないからね。

著者はよく本を読んでいると思うが、本の選び方は教養主義とはまったく違うもの。人気のあるものを追いかけているのとも違う。たぶん、自分の好きなものつながりで本を集めているのだろうが、こんな趣味だとある程度ちゃんとした図書館のある大きな町でないとやっていけないだろう。

このシリーズは2巻完結。著者が愛を寄せているアイテムしかネタにできないので、どんどん書き続けるというわけにはいかないだろう。装丁も美しく決まっているので、電子化はしたくない本。