基地はなぜ沖縄に集中しているのか

NHK取材班『基地はなぜ沖縄に集中しているのか』、NHK出版、2011


NHK沖縄放送局のスタッフが、2010年6月20日放送の「BS特集」「現場報告 アメリ海兵隊~変わる沖縄駐留の意味」と、2010年12月5日放送の「NHKスペシャル」「シリーズ日米安保50年 第2回 沖縄”平和”の代償」の2つの番組を作った素材で書いた本。

NHKのやっていることだけはあり、沖縄に最初に海兵隊が駐留するようになった理由をよく調べている。完全な答えではないのだが、基本的には合っているだろう。「日本国内で政治的問題になっていた海兵隊を、米軍政下で政治的問題がない沖縄に持ってきた」ということ。これを調べただけでも価値はあるだろう。

辺野古周辺住民、海兵隊にもあたってよく話を聞いている。辺野古にしてみれば、「反対を押し通して安く値切られるよりは、基地を受け入れて条件闘争にしたほうがまし」ということ。海兵隊の言っていることは教科書どおりだが、ハワイでは海兵隊は住民に協力をもとめる分、説明もしていると書いてある。それはそうなのだろう。

しかし、あまり奥まで突っ込んだ本とは思えない。240ページあまりの本で沖縄米軍基地問題海兵隊に限っても突っ込むのは無理だというだけではない。基地関連の工事のお金はどこに落ちているのか、分配はどうなっているのか、誰が得して、誰が得していないのか、そこはこの本を読んでもぬるいことしか書かれていない。

また、海兵隊が最初に来た理由が、軍政下でなんでもできたから、というのは正しいとして、その後沖縄の戦略的価値がどう変わったのかについては何も書いていない。「地政学的議論」をちょっと批判しておわり。

序章や「おわりに」で、基地維持派の住民や海兵隊に偏った取材をしたのではないかとさんざん言い訳しているが、そんな言い訳は必要なく、取材がぬるいところまでしか届いていないのが問題。沖縄の放送局で取材していると、地元にここまで気を使わなければいけないのかということを、「逆に」浮き彫りにしている。そういう意味では読む価値はある。