おばあさんの魂
酒井順子『おばあさんの魂』、幻冬舎、2011
著者の「おばあさん」ネタのエッセイ。著者自身の祖母綾子氏のほか、瀬戸内寂聴、田辺聖子、森光子、小倉遊亀、ジョージア・オキーフ、マルグリット・デュラスその他の超絶的な老女の話。
人間、老けたからと言って、それまでと根本的に変わるわけではないので、後世に名前が残るような仕事をした人は、若い時でも老いてからも、えらい人生を送っていただろう。著者が偉人の列に加えられるような老人をたくさん出しているのは、その人たちに見習おうというつもりがあってのことだろうが、他人が簡単にまねられるようなものではない。
それより、印象に残るのは著者自身の祖母のエピソード。2011年に101歳で亡くなったのだが、そんなに長生きしている人だけのことはあり、死ぬ直前まで非常に元気。著者がおばあちゃん子で、昔のエピソードをたくさん覚えていることもあって、魅力的な人だったことは十分伝わってくる。
誰でも早く死ななければ、じじい、ばばあになるので、よく年をとるのが大事なことだとはわかるが、老けていけばいくほど、えらい人に学ぶのはむずかしい。周囲の人に好かれて死ぬのも簡単なことではないので、著者の祖母のような話は、めったにはないこと。ありがたい。