日本発狂

手塚治虫『日本発狂』、手塚プロ、2014


これは電子版で読んだので2014年発行となっているが、初出は昭和49-50年の『高1コース』。内容は手塚版「死後の世界」。

主人公の高校生(定時制だ)、北村市郎が夜中に幽霊の行進を見て、そこから死後の世界に自分から行くことになる。死後の世界は、独裁的な政府が支配していて、そのメンバー黒服党が、反対派の革命軍と戦争している。戦争、強制収容所、死刑となんでもある世界。死後の世界で死ぬと、ある者は生前の世界に戻ってくるが、別の者は消滅して無になってしまう。

北村は、反対派を7600万人引き連れて、生前の世界に戻ってくる。しかし日本に7600万人の幽霊が現れたので大混乱になり、幽霊のほとんどはアマゾンで暮らすためにそっちに行くことになる(ブラジルの都合はどうなったのか?)。日本に残りたい者は、そこで赤ん坊に生まれ代わることになり、北村も転生して、その後高校生に戻るのでした。

死後の世界といっても、まるっきり神秘的なところはなく、現実の世界と何も変わらない。神も悪魔もおらず、死後の人間だけで構成されている世界なのでそういうことになってしまう。UFOだの幽霊だのといったものも、死後の世界から来たものが、生前の世界ではそのように見えるというだけ。手塚は、死んでも人間は変わらないと思っていたということ。