2015-05-19 田中角栄秘録 本 #政界 大下英治『田中角栄秘録』、イースト新書、2013 「田中角栄エピソード集」のような本。最初の部分は、田中角栄と、石破二朗、石破茂親子のエピソードから始まっていて、ここは石破茂から直接聞いたのだろう。 その後の部分も、入内島金一(田中の政界入り以前からの同僚、「刎頚の友」)とか、小佐野賢治とか、大平正芳、佐藤昭ほか、田中角栄周辺の人々と田中の関係を追いかけて話が進む。 終わりの創政会旗揚げをめぐる竹下登、金丸信らとのケンカの部分がハイライトで、この最中に田中が脳梗塞で倒れてそのままになってしまうから、最もドラマチックなところ。 まあ、どこを読んでもおもしろいのは確か。権力の取り合いで真剣勝負をしている人のエピソードは読ませるものがある。 しかし、田中角栄は、名前も業績もあり、没後20年以上たっているにもかかわらず、本格的な評伝は一冊も出ておらず、この本のように周辺の人の回顧談を並べた本や、作家(津本陽や水木楊)の本(これも内容はだいたい同じ)などしかない。人間的に魅力がある人だったということはわかっても、選挙、政策、集金システムなどをきちんとまとめた内容ではない。 今は田中角栄の子飼いで議員になった人たちがまだ生きているのだし、田中真紀子もいるのだから、話を聞ける最後の時期のような気がするのだが、歴史家は誰も手を付けていないのだろうか。そんなわけはないと思うのだが。