自衛隊が危ない

杉山隆男自衛隊が危ない』、小学館、2014


2014年発行というのはこれが電子版だからで、底本は2009年に出ている。著者にしてはめずらしい、自衛隊の問題に対する批判を集めた本。

論点は、「軍人」精神の欠如、戦前からの伝統の無批判な受容、アメリカ追随などなど。そんなに目新しいことではなく、以前から言われていることではあるが、自衛隊の組織に上から末端までへばりついて見てきた人が書いているので、ただの指摘の羅列ではなく、説得力はある。

中でもおもしろかったのは、落ちこぼれの隊員を周りの隊員が助けていた部隊が改変で廃止されたエピソード。それを著者は、「軍隊になりきれていなかった自衛隊が、いよいよ軍隊をめざして歩みはじめたこと」だと言っていて、それが「危ない」ことの一つに入っている。

一方で「武人であれ」と言っておいて、もう一方で軍事組織としての合理性を追求することを批判するのは、矛盾しているように思うが、著者にとっては、自分が見てきた自衛隊そのものへの愛着が勝っているのだろう。これはこれで、人としてはありうる態度。

自衛隊はよくも悪くも、戦後日本にできた特殊な「軍隊」。その特殊性の中には、実際に戦争している軍隊とは違う温さも、アメリカへの従属的な関係もまるごと入っているので、一部だけを変えるのは簡単なことではないだろう。