有坂銃
兵頭二十八『有坂銃 日露戦争の本当の勝因』、光人社NF文庫、2009
単なる個人の伝記ではなく、当時の小銃と野砲の基本的な機構、設計や生産の問題、テストの方式、実戦上の課題などがきちんと書かれている。第一次世界大戦以前に小銃と野砲をどのように組み合わせて戦争が行われているかがわかるようになっている。
戦後に書かれた有坂成章の伝記はこれ一冊しかないと著者は言っている。戦争史だけでなく、産業史においても貴重な本。
後半におかれている「終章にかえて 日本人の武器観」で、「日本人の武器選択の基準は、主兵を高級に見せるかどうか」だと変なことを言っているところがちょっと気になるが、それ以外は史料をちゃんとあたって書かれている。
最近の著者の本はちょっとどうなのかと思われるものがあるのだが、この本はきちんとしている。ちゃんと調べて事実をあたっていれば、いい本を出しているのに…。