ポエムに万歳!

小田嶋隆『ポエムに万歳!』、新潮社、2014


メールマガジン、雑誌の原稿に、語りおろし対談(相手は、CMプランナー、作詞家の麻生哲朗)を足して編集した本。おもしろい。

ポエムは著者が勝手に意味をつくった言葉で、「書き手が何か(詩、散文その他)を意図して書きながら、それになりきれずに失敗した文章の断片」の意味。ポエムを作る人が「ポエマー」(poet=詩人ではない)。著者がポエムの例としてあげるものは、中田英寿の引退メッセージ、相田みつをの詩、最近の天声人語その他。

著者がポエム発祥の地と位置づけるのは、2ちゃんねるの2002年に立ったスレッド。これは作者が自分を「厨房」と自虐的に言って上げた文章。これと同種の文章が、2010年代になるとあっという間に社会に拡大するようになったという。著者が、ポエマーとしてあげている名前は、潮田玲子吉高由里子中山美穂尾野真千子柴咲コウベッキーなど。全部ネットの文章。

巻末の麻生哲朗との対談も笑える。コピーライターは、ポエムと文筆業者の中間にいるような職業。ここでポエムと詩の違いは、「ポエムが自分語りに終始している」といっている。「思い」があって、受け手の立場は考えていない文章。そういえば、鳩山由紀夫はしょっちゅう「思い」と言っていたわ。

「言うことがないのに、何かを言わなきゃいけない時に出てくるのがポエム」、「他人のチェックが入らない時に出てきやすいのがポエム」とも言っている。考えたら、この文章もポエムだわ。