創価学会と平和主義

佐藤優創価学会と平和主義』、朝日新書、2014


この本にはびっくりした。佐藤優って、こういう人だったのか。

内容は完全に創価学会池田大作のヨイショ本。「私の結論を先に言えば、「公明党の平和主義は本物である。それは創価学会の平和主義が本物だからだ」ということに尽きる」という文章が第1章におかれていて、この時点で「?」と思った。しかし、読み進めていくとこんなものではすまない。

最初のところで、「佐藤優は学会にカネで買われているのではないかと言われているが、そんなことはない」とか、「意に反する内容の原稿を依頼されても書くことは絶対ない」と書いている。カネをもらったかどうかは別にして、こんなことを書くのは「創価学会の中の人」以外にはいないだろう。

佐藤は、「自分はキリスト教の信者なので、創価学会の中のことはわからない」と書いているが、そんなことはないでしょ。公明党だけでなく、創価学会を持ち上げていること、特に創価学会インタナショナルを絶賛していること、池田大作個人崇拝を書きまくっていることを読めば、佐藤が「書かされている」のでないとすれば、完全に「学会の人になった」ということ。そもそも、この本、日蓮の話はろくに出てこないし、仏教の中での創価学会の位置づけの話も出てこない。出てくるのはひたすら、創価学会池田大作だけ。

王仏冥合をおしすすめよとか、中の人でないと絶対に書かないようなことも書いてある。「広宣流布国立戒壇」という学会の昔の主張の否定は、池田大作『人間革命』の引用で済ませている。学会の主張をさかのぼって検討する努力など皆無。全部が学会の主張をそのまま述べているだけである。あげくに、「中道左派の政党は存在しないので、公明党は躍進のチャンス」とも書いている。開いた口が塞がらない。

創価学会ナショナリズムではないという理由が、「SGI世界宗教だから」ということになっているのにも驚いた。アホちゃうか。しかもナショナリズムの理解は、アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』、ただ一冊ですませている。いいかげんすぎる。

佐藤優の本は、彼が直接経験したこと以外は話半分だと思っていたが、この本を読むと、そういうレベルではない。とにかくまゆにつばをつけてから読まなければいけない人。とにかくおどろいた。