沖縄現代政治史

佐道明広『沖縄現代政治史 「自立」をめぐる攻防』、吉田書店、2014


沖縄返還以後の政治史をまとめた本。あまりこのネタで偏っていない立場の人が書いた本がいいと思って読んだが、その点は微妙なところ。

基本的には大田県政期の、「国際都市形成構想」を中心に書いている。しかし、この「国際都市形成構想」というものも、一体何を目指しているのかよくわからない。沖縄で繰り返し言われる「自立」と同じもの。「経済発展と低所得状態からの脱出」というのであれば、まだわかるが、それだけではない意味が入っている。これも沖縄のエスニック・ナショナリズムの一形態だろう。

その後の稲嶺県政期のことも書いてあるが、そちらは簡単な論述。

巻末に掲載されている世論調査の内容を見ると、中国脅威論は沖縄でも全国平均値以上に強く認識されており、米軍基地問題への意見を除けば、沖縄県の世論は全国世論と大きく隔たっていないことはわかる。これは収穫だったこと。

著者は、大田昌秀と大田時代に副知事だった吉元政矩への聞き取りから沖縄研究を始めていて、それはいいが、琉球新報の潮平芳和や前泊博盛、松元剛、宮城修とか、そんな人を主要な情報源にしていたのでは、考え方が歪んでもしかたないのでは?著者は、沖縄のジャーナリズムは簡単な決めつけができる存在ではないとしていて、それはそうかもしれないが、2つの新聞の論調がほとんど変わらないことを見れば、そのままには受け取れない。

基地問題を取り上げるのであれば、建設業者の利権問題は避けて通れないと思う。また、沖縄での「保守、革新」と言われる特殊な政治勢力間の関係にも言及がない。一冊の本で全部を書けというのはムリだが、重要な論点に言及していないのはおかしい。

著者は「沖縄差別、本土の無理解」を強調していて、そのような面があることは否定できないが、防衛問題を専門にしているにもかかわらず、著者の普天間基地問題の扱いは甘すぎるし、「本土の無理解」の鏡像のようになっている著者の理解が正しいとは思えない。いろんな意味で微妙な本。