少女の私を愛したあなた

マーゴ・フラゴソ(稲松三千野訳)『少女の私を愛したあなた 秘密と沈黙 15年間の手記』、原書房、2013


著者が幼少期から受けていた性的虐待と毎日の生活を再構成した手記。となりに住んでいたピーターは最初51歳、著者のマーゴは7歳。

著者の母親には精神病があって、きちんと育児ができておらず、ピーターは動物やおもちゃを使って、上手にマーゴの家庭に入り込み、マーゴの「友達」になる。

ピーターがマーゴと性的関係を結ぶ方法は、脅迫や実力ではなく、人間関係をつくって「約束」「信頼」で性的関係を迫るというもの。最初は、マーゴは断っているのだが、「誕生日のプレゼント」として、ピーターにフェラチオをするようになる。

マーゴの父親が、娘と隣人の関係が変だと気づいて介入しようとするが、うまくいかない。父親もきちんとした育児をしておらず、妻ともまともに関係を結べていない。家庭が半壊した状態で、ピーターがマーゴの「友達」になってしまっているので、簡単にはひきはがせない。

ピーター自身も家庭を持っていて、ソーシャルワーカーが調査のためにピーターの家を訪問し、マーゴにもピーターとの関係を質問する。ピーターは自分の性癖を示すものをすべて隠すことができなかったので、ソーシャルワーカーは怪しいことに気づくのだが、ピーターはきちんと答えることを拒み、マーゴも二人の「秘密」を守ろうとするので、かんじんなことは何も聞き出せないまま終わる。

関係が断絶するのは、出会いから15年後、マーゴは22歳でコミュニティ・カレッジの学生、ピーターは66歳。ピーターが自殺を遂げて終わる。ピーターは何度も自殺を試みていて、やっとその試みを実行したのだ。この前にピーターはマーゴと性交している。

この本は、30歳をすぎて結婚、出産し、大学院に通っている間に書かれたもの。自分の過去を整理するための本。自分がされたことは虐待ではあるが、自分とピーターの間には、愛情と信頼関係があったことも認識した上で書かれている。また、このゆがんだ関係が、部分的には祖父母と母親の関係にも原因があることが認識されている。単純にピーターを断罪した本ではない。

しかし読んでいる方も相当胸が悪くなるような記述が440ページあまりも続くので、著者がこの本を書き上げるのは非常に厳しいものだったはず。意思の強さがなければ完成させることはできない本。