夜の帳の中で

吾妻ひでお『夜の帳の中で』、チクマ秀版社、2006


吾妻ひでおの作品集だが、エロネタ多し。これは、『劇画アリス』に掲載されていた作品が多いから。初出リストを見ると、1980年から84年までの作品を収録している。

絵柄も今とは少し違い、女の子の目や、髪型、体型も違うから、最初に見た時はとまどった。目の中の輝きの入れ方が、いまより小さめで、これだけでずいぶん印象が違う。とはいえ、吾妻ひでおの女の子はやっぱり可愛い。

女の子の体型もだいぶ細め。昔はむちむちした女の子は受けなかったのか?それとも、単に作家の好みが変わったのか?

川又千秋原作の「ぬいぐるみ」という短編が入っていて、これが特におもしろい。アイディアがいいし、主人公の男性の暗さも魅力的。作者自身は、あとがきで「暗いのはもともとうつだからです」と書いている。

このあとがきで、ナンセンスギャグを書き続けるのは心を病むとあるが、ただ読んでいる分にはほんとうにたのしいわ。妄想の翼をひろげられるので、何回読んでもあきない。絵柄はかわいいし、気持ち悪いのに、エグくない。これは吾妻ひでおにしか出ない味。