ねこの秘密
山根明弘『ねこの秘密』、文春新書、2014
自分や家がねこを飼ったことがないので、ねこのことは全然知らなかったから、どこを読んでもおもしろい発見がある。
ねこの習性や性格(特に犬と比べた場合の違い)は、ほとんどネコ科の動物’とくに原種のリビアヤマネコから受け継いだもの。犬はオオカミが家畜化されたもので、リビアヤマネコが単独生活、オオカミは集団生活が基本だから、違うところが目立つのは当然。
もっとも興味をそそられたのは繁殖。食料があまりないところののらねこは、年に一度しか発情しないから、それほど繁殖しない。一度に4匹が5匹の子ねこが生まれても、その中で生き残るのは1匹程度なので、そんなに増えない。しかし飼いねこ、食料の豊富な都市ののらねこは話が別で、栄養が豊富で身体が大きくなってくると、その分は繁殖のために使われるので、年に何度も発情、繁殖することがある。
「ねこパンチ」と言われる行動の理由や、繁殖でどのようなねこが子孫を残しやすいかということのこたえもおもしろい。どんな動物もそうだが、ねこもより生き残りやすいものが、多く子孫を残せるようになっている。ねこの場合は、身体の大きなオスが優位。
ねこは縄張りがある動物なので、縄張りの外から来たオスは子孫を残しにくい。それでも、ねこのメスは、縄張り内部のオスとではなく、外から来たオスと交尾するために、急に移動して、縄張り内部のオスの目を逃れようとすることがあるという。
著者の説明では、縄張り内部では、オス社会の序列でほぼ交尾相手が決まってしまうので、自分で交尾の相手を選ぶために、集団外のオスと交尾しているという。しかも、妊娠の確率が高い時にメスがそのような行動をとることが多い。この理由は近親交配を避けるためだと説明されている。
三毛猫がメスばかり(三毛猫の遺伝メカニズムが説明されている)とか、「ねこは死ぬときに姿を消す」と言われていることが事実かどうか、など、興味深い事実が多数取り上げられていて楽しく読めた。これは飼いねこだけ見ていてはわからないので、野生のねこを研究しなければならないこと。
毎年殺処分されているねこが10万匹いて、その重要な理由がのらねこへの餌やりにあることも初めて知った。安易に餌やりをすることはねこにとってもよくないということ。