コレモ日本語アルカ?

金水敏『コレモ日本語アルカ? 異人のことばが生まれるとき』、岩波書店、2014


岩波から出ている「そうだったんだ!日本語」シリーズの1冊。3ヶ月前くらいに出た本。非常におもしろい。

お笑いやマンガに出てくる中国人が使っている変な日本語「なんとかアルカ?」「なんとかアルヨ」が、一体どこから来たのかを考察する本。実際に日本にいる中国人でそんな言葉遣いをする人はいないので、昔のいつかの時点で「発明」されたもの。

起源は横浜の居留地で外国人が使っていたピジン日本語。明治のはじめには、このピジン日本語は外国人が一般的に使っており、清人には限られていなかった。

それが満州事変とその後満州、中国に移住した日本人が使っていた満州ピジンに受け継がれ、「片言の変な中国語」になっていった。この変な中国語が「中国人が使っているであろう変な日本語」にトランスフォームされ、さらに「ずるい」「奇術師」「子取り」という中国人のイメージと結びついて、「中国人が使う変な日本語」になった。

これを戦後に広めたのが、森繁久彌や、藤村有弘、西村晃小沢昭一らの人々。彼らは戦前の「変な日本語」を知っていた人。それがマンガ、ゼンジー北京、チャイナ少女キャラなどを通じて定着したものが、「なんとかアルカ?」言葉。

中国でも、変な中国語を使う日本人が、「日本鬼子」の典型例として定着しているということがおもしろい。

とにかく、非常に広い範囲から用例が集められていて、謎解きのおもしろさに感動させられる。今年読んだ本の中で十傑に入るおもしろさ。