コレクターと美術館

「コレクターと美術館」、保坂健二朗、広島市現代美術館、2014.12.21


広島市現代美術館で行われた講演会。講演者は、東京国立近代美術館主任研究員。

現代美術館の今回の展覧会が、「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」というもので、この展覧会は、東京国立近代美術館から巡回してきた。保坂氏はこの展覧会の企画者。

ヤゲオ財団は、台湾の実業家が美術コレクションのために作っている財団で、現代美術コレクターとして、世界で五指に入るメジャーな財団。ここをとっかかりにして、美術コレクターの世界と、美術館との関係を話すのがこの講演。

現代美術コレクターは最近、アジア、東方地域が重要な地位を占めるようになったが、日本人はほぼ入っておらず、主要なコレクター200人/組織の中で、日本人は4人だけ。ベネッセの福武總一郎、ファーストリテイリング柳井正大林組の大林剛郎、大和プレスという広島の会社の社長の佐藤辰美。日本人の金持ちはあまり美術品は買わないというので、そういうものなのね。

この講演でスライドで紹介されたメジャーなコレクターはとにかくものすごい。使っている金額は当然ものすごいのだろうが、コレクションのためのセットアップがものすごい。個人美術館を建てるとか、世界各地に豪邸を建て、その家そのものがギャラリーになっていたりする。

コレクションの動機は、好みか投資のどちらかだということだが、現代美術は投資物件としては割にあわないという。もし投資が引き合うものであれば、画商はみんな大金持ちになっているはずだが、そういうことは起こらないので、確かに納得。

この展覧会のヤゲオ財団の主、「ピエール・チェン」という台湾人は、完全に好みで美術を集めていて、買う作品の選定はすべて自分でやっている。購入の手続きをするための人は雇っているが、買う作品は人任せにはしない。好きだからできること。コレクターはそういうもの。