翔ぶが如く 7

司馬遼太郎翔ぶが如く』7、文春文庫、1980


神風連、萩、秋月の蜂起はあっという間になぎ倒された。これは当たり前。川路利良は、薩摩出身の警視庁のメンバーを薩摩に送り込む。この目的は、西郷暗殺なのか、単なる説得なのか、それがこの巻の問題。

結局司馬遼太郎も、密偵の目的が本当は何だったのか、はっきりしたことは言っていない。ただし、この密偵たちが西南戦争後、それなりに出世して余生を安楽に終えたことから、太政官は、密偵たちが「正しく目的を果たした」と見なしていて、密偵の目的が薩摩の挑発にあったことは疑えないとする。

挑発されたことはともかく、それに乗っかって戦争に乗り出した薩摩側に計算はあったのかというと、それはまったくできていなかった。西郷暗殺の企てに対して太政官を問責するといっても、西郷が数人で行くわけではない。兵を起こして上京するのだが、戦略一切なし。熊本鎮台など、一蹴りで落ちるはずで、2週間で大阪に到着すると思っている。

西郷本人もアレだが、周りにちゃんと止める人がいない。厳密に言うと止める幹部もいたのだが、桐野利秋篠原国幹が一喝して終わり。何事も空気で決まってしまうのだ。

西南戦争も、他の士族反乱とたいして変わらない、思いつきと勢いで始めたものだというおはなし。日本はこんなのばっかり。