日の出湯

「日の出湯」、広島市安芸区矢野西5-19-28


広島の「スーパー古い銭湯」。2014年11月に残っている銭湯の中では、ここが一番古いものになった。勝利湯が潰れてしまって、ざんねん。しかし、ここも非常に味わいのある銭湯。

JR矢野駅から、5分ちょっと歩くと到着するが、あらかじめ地図を用意して行かないと、すぐ迷う。5年前くらいに初めて行った時には、どこの道を上ればいいのか、よくわからなくなって非常に困った。今は、スマートフォンの地図を見ればいいので大丈夫。

広島市といっても、安芸区矢野なので、市内中心部からはかなり離れていて、呉市からも遠い。ここから広島駅までの間に、自分が知っている限りで、向洋駅や、大洲あたりに何軒か銭湯があったが、すべてなくなり、住宅地の中にあるここだけが孤塁を守っている。

一見して、戦前の建築と思われる、ちょっと洋風のつくりで、花街のお茶屋のようなランプがついている。中は、そんなに広くはない脱衣場と、青一色で塗られた浴場。もちろん、サウナやジェットバスのような近代設備は皆無で、間仕切りで仕切られた2つの浴槽があるだけ。この2つはつながっているのだが、小さい浴槽のほうがちょっとぬるめ、大きい浴槽がちょっと熱めで、長湯したいときと、あたたまりたいときで、どちらか選べるようになっている。ありがたい。

浴場の床タイルは、細かい細工のほどこされたきれいなもの。これはたぶん出来た時から変わっていない。汚れもなく、古いが清潔感のある浴室。

ここは、市内の銭湯では、断然客が少なく、16時半の開店後すぐには、数人客がいるが、その後はぽつりぽつりと入れ替わって一人客状態が続く。しかも、この銭湯だけ、市内では350円。組合の協定料金は400円だが、「廃材で沸かしているから」という理由でここだけ安くしている。いまどき奇特なことだ。

おばあちゃんは年がいっているが、声はしゃんとした人。あれくらい元気なら、しばらくは続けられると思うが、客数からして、そんなに長くはないだろう。

鏡に貼ってある広告にある店の電話番号には、市内局番がない。自動交換になるずっと前にできたのだが、市内局番がないというのはここだけ。これもたぶん戦前の遺産。