翔ぶが如く 5

司馬遼太郎翔ぶが如く』5、文春文庫、1980


この巻の前半は、台湾出兵の収拾。大久保利通が、自分で北京に出向いて交渉し、名をとってなんとか清に出兵を「義挙」と認めさせる。大久保が自ら仕組んだ出兵なので、自分で尻を拭くのはしかたない。

しかし、木戸は政府から出てしまうし、現実的に得られたものはないので、目的だった士族の不満抑圧もできない。大久保は、政治はできる人だが、どうしても人望の集まらない人。著者の描き方が、そういうことになっているので、そうとしか見えないのだろうが、有能で悪口を自分でかぶれる人であっても、損な役に回ってしまう人。

台湾出兵の後は、宮崎八郎という人物に話が移る。これは、肥後の人で、民権運動にかぶれていたが、最後は西南戦争に投じて戦死したという人物。台湾出兵にも参加していた。国権論者で、壮士気質なのだが、ルソーを読んですっかり民権論に走ってしまう。現在から見ると、あっちこっちにぶれているように見えるのだが、「当時は、こういうことも一貫しているものとして、あたりまえだったのですよ」ということを説明するために持ちだされている人。宮崎当店の兄で、新聞社にも入っていて、おもしろい人物であることは確か。