翔ぶが如く 4

司馬遼太郎翔ぶが如く』4、文春文庫、1980


4巻は、佐賀の乱台湾出兵。両方とも、大久保利通が動く事件だが、佐賀の乱では大久保が、全力で反乱を潰して、江藤新平をあっさり梟首する。江藤は何も考えておらず、反乱を起こせば西郷も呼応すると勝手に決め込んでやっただけ。何の計画もないので、あっさり失敗。著者も、何の同情もしていないし、西郷隆盛も、反乱に応じるように頼みに来た江藤を見送るだけで、まったく協力するそぶりもない。

あとの部分は、私学校の設置と、私学校の幹部たち、それを含めた西郷が敬意を払っていた人々の群像描写が続く。村田新八、春日潜庵、高橋新吉、津田出ら。村田新八以外の人は聞かない名前。しかし、あまり有名でない人々でも、西郷周りの人々は変人ばかりでおもしろい。村田新八以外は、新しい時代に適応しているとはいえない人々だが、それもいい味になっている。

台湾出兵は、征韓論以上にむちゃくちゃな企画として描かれていて、これだけ読むと、大久保が西郷に比べて物事をよく考えているとは簡単には言えなくなる。征韓論より、多少危険が少ないギャンブルというだけで、周囲の反応にはあまり配慮せず、出兵の成算も立てずに、ガス抜きとしてやってみただけ。

この巻では、台湾出兵をしたところまでで切れていて、大久保の外交交渉はまだ始まっていないが、西郷も大久保も、ギャンブル好きという点では同じ。アメリカとイギリスの外交団に振り回されているところがおもしろい。