日本の風俗嬢

中村淳彦『日本の風俗嬢』、新潮新書、2014


アダルトビデオ、風俗関係のルポルタージュを長く続けている著者による、「日本風俗業界事情」の本。

著者の推計では性風俗で働いている女性の数は、35万人。店舗数などから推計した数字で、もちろん外国人も含んでいるし、ソープランドのようなグレイゾーンの売春業から、個人売春や、デリヘル、店舗型ヘルス、性感マッサージ、ピンクサロンSMクラブなどの本番行為を伴わない風俗店で働いている女性を推計したもの。

この仕事につける女性の年齢層がある程度限られていることを考えれば、この数字は多いと思う。実際にこの本に書いてあるのは、アダルトビデオ業界と同じで、この業界は需要が減っているのに、供給は増えており、結果として業界全体がもうからなくなっていて、当然そこで働いている女性の収入も下がっていること。

店舗型風俗店は規制が厳しいので、新規開業はほとんどできず、参入はデリバリーヘルスしかできない。結果としてデリバリーヘルスは供給過剰になっていて、宣伝費が非常にかかり、利益が出ない業種になっている。

働いている女性の典型例として、大学生、介護職員が挙げられている。不景気が続いているので、短時間で比較的収入のよい風俗業に参入しようとする人が多いのだ。

風俗嬢の供給が増えているのだから、風俗嬢になること、なって稼ぐこと自体が難しくなっており、特に格安店や地方の風俗店では、収入のいい人で固定客がついている人であっても、25万円から35万円くらいの収入。これも、容姿が優れている、人当たりがいいという条件がある程度何とかなっている場合の話。風俗業はもはや底辺の職業ではなくなっていて(社会的地位としては底辺であっても)、参加して収入をあげるにはそれなりに競争で生き残れる人しかやっていけない。この競争に残れる人のための職業になっている。

性風俗を仕事にすること自体が、社会的にリスクの高い仕事なので、この条件では一部の高収入が得られる人以外には割が合わないだろう。著者もそのように述べている。しかし、経済的に状況が厳しく、他に仕事につける見込みがない女性にとっては条件が悪くても、ここで仕事を探すことが合理的。日本社会の経済的疲弊の実態を再認識させられる。