検証 日朝交渉

高崎宗司『検証 日朝交渉』、平凡社新書、2004


日朝政府間交渉の経過を、この本が出版された2004年の時点までまとめている本。類書があまりないので、事実関係を把握しておくには便利な本。

しかし、分析は基本的にほとんどなく、著者の政治的立場は、「植民地支配の北朝鮮への謝罪と、北朝鮮との国交正常化が必要」というものなので、著者の「感想」「コメント」が随所に入っている。これが余計。著者の分析ではない感想は、ほとんど邪魔にしかなっていない。

また、著者は、日朝交渉が失敗してきた理由を、「日本側の北朝鮮に対する硬直的な世論と、それに引きずられている政府の態度」にもとめているので、この本も一貫してそういう立場で書かれている。米朝交渉についても付随的に言及されているが、北朝鮮に対しては甘い見方しか書かれておらず、あまり役には立たない。

著者が、「日朝交渉がうまくいかないのは、日本国内の対北朝鮮強硬派のせい」だと考えているのなら、なぜ日本国内でそのような見解が強いのかをきちんと分析して書くべき。もともと拉致問題に対する注目度が上る前は、日本国内では北朝鮮に対する関心は薄かったのだから。著者の、日本世論や対北朝鮮強硬派に対する「感想」は、自分の意見が日本社会でほとんど相手にされていないことに対する愚痴としか読めない。あまり生産的な態度ではない。