好きだけじゃ続かない

松田洋子『好きだけじゃ続かない』、エンターブレイン、2014


田舎の貧乏人の悲惨さを描けば、日本のナンバーワン、松田洋子の、昔の貧乏人マンガ。

「好きだけじゃ続かない」は、表題作だが、田舎の中学生同士の交換日記ストーリー。「リア充じゃないか、うらやましい」と思って読んでいたら、もちろん、そのままラブ関係になるわけではない。というより、男女関係が恋愛まで行かないでダメになる時は、こういうものだなーという哀愁あふれる作品。こればかりは、田舎の貧乏人も、都会の大学生も同じ。

「平凡なヨウコちゃん」は、作者が特異な悲惨な貧乏人スペシャルネタ。じじい、ばばあから、家族みんなが転落していく人生の話。夜逃げして落ち延びた先は、豚小屋の管理人。豚小屋は、とにかく臭いがすごいのだ。豚小屋の隣に人家があったら、それはたいへん。子供以外は、誰にも同情できないところも、作者の作品のいいところ。

「青空必携1982」、「ビックリハウス・ゲイトウェイ」は、あとがきで著者が、実話度が一番高い作品だと書いている。作者は福山出身の人なので、福山の日本鋼管の工場がドカドカ建っている風景を描いている。そういえば、昔は光化学スモッグ注意報がどこでもよく出てたわ。まあ、当時の福山とか、まったくわからないけど、昔の田舎なんかみんな似たようなもの。

このマンガ、電子版で買ったが、紙よりも電子版の方が早く出ている。マンガはすっかりそういう世界になったのだ。こちらはもう紙のマンガはよほどのことがないと買わないので、こういうシステムはとても助かる。