翔ぶが如く 2

司馬遼太郎翔ぶが如く』2、文春文庫、1980


「飛ぶが如く」全10巻の2巻。この巻の最後で、ようやく征韓論を否決する朝議が開かれる前まで進むので、非常にゆっくりしたペースのおはなし。

しかし退屈しないのは、やはり人物描写。この巻で、大久保利通岩倉具視木戸孝允山県有朋伊藤博文板垣退助らが出てくる。大久保利通はまだ全容を現していないが、あとの人物は、もちろん一癖も二癖もある人たち。

司馬遼太郎は、たいてい山県有朋については悪口しか言わないのだが、さすがにこの本では、悪口を言いながら、山県の役割と功績についてはきちんと言及している。なにしろ、日本陸軍は、大村益次郎亡き後、山県が作ったようなもの。ただのセコイ陰謀家では務まらない。

伊藤博文岩倉具視の寝技、木戸孝允の複雑さ、そこに脇から絡んでくる、島津久光やら、英公使パークスやら、元旗本の娘で芸者になる女、千絵やら、いろんな人々が出てくる。これを眺めているだけでもあきない。

もちろん、話は征韓論否決に向けて、周りの人々が一歩ずつ包囲網を詰めていくので、緊張感がとぎれない。3巻はもうちょっとゆっくり読もう。