一神教と国家

内田樹中田考一神教と国家 イスラームキリスト教ユダヤ教』、光文社新書、2014


イスラム学者とレヴィナス研究者が対談しているので、ユダヤ教キリスト教イスラム教の一神教の系譜と、イスラム教(著者は当然「イスラーム」としか書かないが)のざっくりした説明が有用な本。

特に中田考の持論である、「イスラームは1つであるべきなのに、イスラム地域の国家指導者がそれを邪魔している。したがって、イスラム圏の国家を廃絶し、カリフ制を立てるべし」という議論が容赦なく展開されている。テレビで人非人扱いされているISの支配がなぜ成立しているのかということは、こういう議論がなければわからないだろう。その意味では貴重な本。

イスラム教の説明は非常に腑に落ちるし、一神教の性格についても勉強になるところは多いのだが、内田樹は相変わらず、「食料自給論」をとうとうと語っていて、困ったもの。国民国家もいずれなくなると言っているが、仮にそういうことがあるとしても、非常に長い時間がかかる話だし、現在国家が果たしている機能は、簡単には他の組織では代替できない。内田樹の本は、こういうことがあるから、あまり読む気にならないのだ。これは中田考の単著を読んだほうがよい。