翔ぶが如く 1

司馬遼太郎翔ぶが如く』1、文春文庫、1980


やめておこうと思ったが、読み出したらとまらない司馬遼太郎。この『翔ぶが如く』は、文春文庫で10巻。

1巻は、川路利良の洋行、警察制度の設置、征韓論大久保利通川路利良による西郷の探索、という内容。司馬遼太郎の他の作品と同じく、時代はあっちこっちに飛ぶし、登場人物はバラバラに出てくる。それでも、圧倒的におもしろい。

おもしろい理由はいろいろあるが、やはり人物描写の造形がみごとなこと。西郷隆盛についてさんざん書いておきながら、西郷の人物の大きさは、直接会ってみなければわからないというようなことを平気で書く。そもそも西郷隆盛の人物も、それを直接書くというよりは、周りの人物の西郷に対する評価と、西郷の事績をたどるのみ。それで読み手は西郷の人物を望遠鏡で見ているような気にさせられる。

逆にこの巻では、大久保利通の描写はほとんどなし。川路利良以外の人物も薄く書かれているだけ。それでもあと9巻がたのしみでしかたがない。

この文庫本は、第1刷が1980年だが、この本自体は1998年に出た第48刷。おそろしい。