インテリジェンスのない国家は滅びる

佐々淳行『インテリジェンスのない国家は滅びる 国家中央情報局を設置せよ』、海竜社、2013


タイトルにひかれて読んでみたが…、確かにおもしろいところはあるが、全体としてはあまりいただけない本。

アルジェリア人質事件で、日本人が多数死亡したが、それは情報を取れない日本の問題を示したものだという。確かにアルジェリアの情報を日本が取れているとは思えないが、日本以外の外国人も多数人質になっていて、結局死んでいるのだから、アメリカやイギリスでも同じ。日本にインテリジェンス機関が必要だという例としては、あまりよい例ではない。

「国家中央情報局」を設置することを提案しているのだが、その機関に何をやらせるかといえば、インテリジェンス業務のほか、「在留邦人の保護、救出」、「日本に対する誹謗中傷に対する抗議」、「防諜」。それはちょっと違うのではないかと思うような話が並んでいる。

実際に本を読んでいくと、外務省の悪口が頻出していて、著者が外務省の仕事を完全にバカにしていることがわかる。著者は、外事警察でたくさんの仕事をしてきた人で、そのことの価値は疑えないが、外務省をディスるばかりというのはいただけない。外務省でも情報を取るためにちゃんとした仕事をしている人がいるのは事実だし、対外インテリジェンスから外務省を外して考えることが現実的でないのも事実。

どうも警察の立場から、ポジショントークをしている感じが強い。民主党政権のこともボロカスに言っているが、民主党政権下でインテリジェンス活動や防諜活動が損なわれたことを具体的に指摘するのであればともかく、悪口だけというのは建設的でない。安倍首相のことを非常にもちあげていることからも、著者の立ち位置がうかがえる本。